2015年12月

じっと耳を傾ける

私が師と仰ぐ、清水寺の森清範貫主の著書「見える命 見えないいのち」の中に、『じっと耳を傾ける「耳施(にせ)」を』という内容があり、「無財の七施」に「耳施」を加えて、「八施」を心がけようと仰っています。

無財の七施とは、「財産、教養、物を用いずに人に施す」ということです。
1、眼施(げんせ):周りの人たちに優しい、思いやりのある目で接すること
2.和顔施(わごんせ):和やかな顔、喜びの顔、希望に満ちた顔で接すること
3.言辞施(ごんじせ):気持ちの良い、明るい言葉、温かい言葉で話しかけること
4.身施(しんせ):骨身を惜しまず真心をこめて奉仕すること
5.心施(しんせ):相手の気持ちを考え、親身になって真心を込めて行うこと
6.床(牀)座施(しょうざせ):他の人のために気持ちよく座席や場所を譲ること
7.房舎施(ぼうしゃせ):温かく自分の家に迎えること

※経典「雑宝蔵経」より

これにもう一つ、「耳施(にせ)」を加えて「八施」を心がけようということです。 耳の施しというのは、『相手の言うことをじっと聴く』『誠心誠意をもって聞く』ということであり、七施が能動的なのに対して受動的な姿勢です。何も言わずにじっと聞き、そして頷く。相手の言葉が出やすいように目・顔・態度を柔らかくして聞く。そして、あまり自分の意見を言いすぎない。質問されたら、自分が経験してきたことの中から「私はこう思うのですが、いかがですか?」と伝える。「私が教えてあげる」というのではなく、同じ高さで話を聞き、同じ高さで話をするということ。「耳施」ができて、相手の気持ちを心から理解できたときには、自分が経験してきたものが宝物となり、「相手と共鳴する」ことになる、と森貫主は仰います。

私たちは、先生という立場や先輩・上司という立場から、相手の話をじっと聞くよりも、ついつい自分の考えや意見を多く語りがち、そして押し付けがちです。
これからの時期、受験や新年度に向かい、私たちはたくさんの生徒さんや保護者の方々、新しく京進と繋がりを持とうと訪れてくださる方々、また、共に働く従業員同士が、特に多く話し合いを持つことになります。まずは、相手の現在の状況や心の状態、当方に対する要望に、じっと耳を傾ける姿勢が大事です。そして、我々が大切にしている“ひとりひとりを大切に”という行動原則のもと、無財の七施で日々取り組んでいきたいと思います。
2016年もどうぞよろしくお願いいたします。

 

代表取締役社長 白川 寛治

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